Glottal stop を上手に使おう

29th/01/2012

Glottal stop(声門閉鎖音または声門破裂音 [ʔ])は英語で非常によく発音されますが、英語では音素的な役割を果たさないためにあまり詳しく説明されることがありません。どこの地域の英語でも glottal stop は /t/ の代用(glottaling)として発音される割合が最も高いのですが、そのパターンは地域によってさまざまです(たとえば以前紹介した Cockney のように)。
さて、今回はこの glottal stop を上手く使うことで /t/ の音の処理がスムーズに出来る発音を紹介します。英語学習者は glottal stop の乱用は避けるべきですが、今回紹介する3つのパターンでは glottal stop を使用することで語尾の /t/ を上手く処理することができ、ネイティブの発音に近づきます。

Glottal stop とは
Glottal stop [ʔ] は声門を急速に閉じることによって肺からの気流を遮断して作られます。完全な無音状態になるので厳密には「音」という定義には通常は入らないと言えますが、[ʔ] が音素として大切な役割を果たしている言語もあります。調音段階では声門を閉じるわけですが、聴覚的に無音であることから、発音している本人にも自覚がない場合が多いのが特徴です。
では、母音 [a:::] の間に長めの glottal stop を入れて発音してみますので、みなさんも真似してみてください。↓

glottal_stop.mp3

[a:::ʔa:::ʔa:::ʔa:::]

語尾の /t/ に次の語の語頭の /w/ が続くとき
このパターンはどこの地域の英語でも /t/ を glottal stop で代用するのが非常に一般的で、英語学習者にとってもオススメです。では、いくつか sentence を使って実演してみます。↓

glottal_before_w.mp3

● What would you like?
 → ‘what would you…’ [wɒʔ wʊdʒu…]
● But when I saw him, he looked fine.
 → ‘but when I…’ [bʌʔ wen aɪ…]
● I don’t like this one. I like that one.
 → ‘…that one’ […ðæʔ wʌn]
● You keep using that word.
 → ‘…that word’ […ðæʔ wɜːd]
● It was very difficult to explain what was really needed.
 → ‘it was…’ […ɪʔ wəz]; ‘…what was…’ [wɒʔ wəz…]

語尾の /t/ に次の語の語頭の /r/ が続くとき
このパターンでの glottal stop の使用も一般的です。↓

glottal_before_r.mp3

● You need to get ready.
 → ‘…get ready’ […geʔ redi]
● Many people still get it wrong.
 → ‘…get it wrong’ […get ɪʔ rɒŋ]
● You have to make it right this time.
 → ‘…make it right’ […meɪk ɪʔ raɪt]
● I don’t know what really counts.
 → ‘…what really…’ […wɒʔ rɪəli…]

語尾の /t/ に次の語の語頭の /j/ が続くとき
このケースは特に American でよく耳にするパターンです。ここは General American で実演してみます。↓

glottal_before_j.mp3

● Do you remember when I met you last summer?
 → ‘…met you…’ […meʔ juː…] or [...metʃuː...]
● I bet you look good on stage.
 → ‘…bet you…’ […beʔ juː…] or [...betʃuː...]
● I’ll never let you go.
 → ‘…let you…’ […leʔ ju…] or [...letʃu...]

Today’s my singing
今回は “Runaway” という軽いノリの曲を歌ってみましたのでアップします。Del Shannon が1961年にヒットさせた有名な曲ですが、Elvis もライブで何度か歌ったことがあります。この曲の冒頭の2カ所(太字で表示)を glottal stop で発音してみました。↓

Runaway 3.mp3

As I walk along I wonder
What went wrong with our love
Love that was so strong

And as I still walk by
I think of the times we had together
While our hearts were young

 I’m a-walking in the rain
 Hear it falling,
 And I feel the pain
 Wishing you were here by me
 To end this misery

 And I wonder
 Why
 You went away
 Yes, I wonder where you will stay
 My little runaway,
 Run, run, run, run, runaway

Run, run, run, run, runaway
Run, run, run, run, runaway

(*発音矯正を望まれる歌手・俳優、また、英語教師などの英語を使うお仕事をされている方は、ホームページをご覧の上メールにてお気軽にご相談ください。)

T-ACT英語発音矯正サービス
Email: s-tanaka@hatsuon-kyosei.com
HP: http://www.hatsuon-kyosei.com

5 Responses to “Glottal stop を上手に使おう”

  1. nar より:

    初めまして、質問があります。
    一つの会話で、2つの方法を両方とも使っている人をたくさん見かけます、Switchさせてるって事です。
    2つと言うのは、「Glottal Stop T」と「普通のT」の事です。
    例えばです、最初にある人が「I think you are right(ライッ)」と言った後続けて「So, you should buy that(ザッ「ト」」と言ったとします。
    最初にGlottal Stopを使っておきながら、二番目の文では普通にTを発音しています。どっちも文末に来ているTです。

    この様に、どう二つの方法を、一つの会話で使い分ければ良いんでしょうか?

  2. Shige より:

    narさん
    英語の /t/ は環境によってさまざまな発音があるので難しいですよね。
    文末の /t/ の発音は、きちんと [t] で発音する場合や slottal stop で行う場合、さらには [t] で発音される場合でも舌尖を歯茎(alveolar ridge)につけたまま口内の空気を開放しないで終わる場合もあり、さまざまです。どのパターンで発音すべきかという規則はありません。自由に使い分けて発音してみてください。

  3. nar より:

    返信ありがとうございます。

    「Slottal Stop」 と 「Alveolar Ridge」を、どう使い分けるかStructureとかRuleみたいなものをあらかじめ分かっていないと、実際の会話の時に喋れなくなると思うんです。

    例えば「Please take that」だと、こうなってしまいます→「Please take ザ・・・・え、「ザット」? 「ザッ」? どっちだ!!???」

    と、こんな風になって喋れなくなってしまいます。
    先に書かせて頂いた様に、Tが文末に来る時の、Slottal と Alveolarを同じ一つの会話でSwitch、使い分けてる人を結構見ます。
    本当にどうすればいいんでしょうか・・・

  4. nar より:

    すみません文を読み違えました。
    まずslottalではなくGlottalです。
    Alveolar Ridgeに付けたまま発音すると言うのはGlottalの事で同じではないのでしょうか?

    それで、文末にTが来た時に 普通のT とGlottal(例えばThat’s ライッ)を一つの会話でどちらも使っていると言う事ですが、あらかじめそれぞれのパターンをどういう時に使えばいいのか分かっていないと先に書いた様になってしまいます。

  5. Shige より:

    narさん
    Glottal stop を作る場所(調音点)は声門です。声帯を瞬間的に閉鎖することで作られます。ですから舌尖が alveolar ridge に接触することを含んではいません。ただ、[t] を作るために舌尖が alveolar ridge に接触する直前に glottal stop が入る場合もよくあります。この現象を glottal reinforcement と言いますが、語尾の /t/ ばかりではなく /p/ や /k/、さらには /tʃ/ などが語尾にある場合によく起こります。

    さて、文末の “Please take that.” などの時の /t/ の発音パターンですが、前回も書きました通り、alveolar の [t] にするか [ʔ](glottal stop)、または開放されない [t]([t ̚ ] と表記します)にするかについては、残念ながらネイティブスピーカーの発音に規則というものはありません。Sentence の structure にも関係ありません。話者によって、また、地域によって、または階級層によって、状況によって、またさらには単語やフレーズの予測度(聞き手が予測がつく単語/フレーズかどうか)によってどちらを好むかは多少異なりますが、いずれにしても任意に発音されます。たとえば発音にとても注意を払う話者であれば文末でも [t] を常に使って発音するかもしれませんし、いつでも glottal stop で発音する人もいます。narさんご自身が発音される場合も、文末の /t/ はどちらで発音しても問題ないと思います。

    ネイティブの発音をたくさん聞いて、ぜひいろいろと実践してみてください。

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