側面開放(lateral release)に関するご質問がとても増えてきましたので、今回はできる限りご質問にお答えできるよう、もう一度解説させていただきます。(lateral release に関して過去に扱った分についてはこちらをご覧下さい。)
/-tl-, -dl-/ という音の繋がりを Lateral release で発音する際に最も大切なことは、舌の側面から空気を開放するときに上前歯の後ろにつけた舌の尖端を一切動かさないことです。(動かしてしまうと舌の中央から空気が出てしまいます。)以下の図を参考にして lateral release による /tl, dl/ の開放の瞬間のイメージをつかんでください。空気の開放は、舌の片方のみから開放されたり両方の側面から開放されたりします。どちらでも大丈夫です。
上の図は上の歯と舌の部分のみを示しています。舌の尖端が上の歯の後ろの歯茎にしっかりと接触したまま、空気が舌の側面から出る(右の図)瞬間を理解してもらえると思います。(空気の流れは赤い矢印で示してあります。)
American では、/tl/ の際の /t/ が有声音化してほぼ /dl/ と同じになる傾向があり、これがさらに進んで fast speech では /t/ 自体がほとんど脱落してしまう場合もあります。
では、いくつかのセンテンスで lateral release を実演してみます。太字で表してある部分が lateral release で発音されています。↓
● He settled down in a little village in the middle of March.
/hiː ˈsetl ˈdaʊn ɪn ə ˈlɪtl ˈvɪlɪdʒ ɪn ðə ˈmɪdl əv ˈmɑːtʃ/
● Sadly, the hospital was damaged badly during the battle.
/ˈsædli | ðə ˈhɒspɪtl wəz ˈdæmɪdʒd ˈbædli djʊərɪŋ ðə ˈbætl/
● Fortunately, they all escaped immediately.
/ˈfɔːtʃʊnətli | wi ˈɔːl ɪˈskeɪpt ɪˈmiːdiətli/
● Audley sent them a bundle of flowers and a metal kettle.
/ˈɔːdli ˈsent ðəm ə ˈbʌndl əv ˈfla(ʊ)əz ən ə ˈmetl ˈketl/
こんどは文章の朗読で実演してみます。以前にもとりあげたことがある Paddington Goes to the Sales からの面白い一説です。↓
Paddington had never been shopping in London before and he was most impressed when he saw Barkridges. It was much bigger than he had ever imagined. When they were inside the shop, Mrs. Brown led the way to the gentlemen’s outfitting department.
“We would like to see some bears’ pyjamas, please,” she said to one of the assistants.
“Bear’s pyjamas?” repeated the man haughtily. “Has modom tried the bargain basement?”
“Certainly not!” said Mrs. Brown. “I’ve never heard of such a thing! Have you, Paddington?”
“Never,” said Paddington hotly, and he gave the man one of his special hard stares.
“He’s been sleeping in his duffle coat, explained Mrs. Brown, “and we don’t want that.”
“We certainly don’t,” agreed the salesman quickly. “Would the young, er…gentleman care for something in stripes? They’re very popular just now.”
“I’d sooner have something with spots, please,” said Paddington, pointing to some with flowers spotted all over them. “If I had a pair like those I don’t think I’d ever get lost, not even if I fell out of bed by mistake.”
“Perhaps you’d like to try them on?” suggested the salesman.
Paddington needed no second bidding.
“The changing rooms are on the right,” called the man. But he was too late. Paddington was already too far away to hear.
“I hope they fit,” said Judy.
“So do I,” agreed the salesman, gazing gloomily at the piles of unsold pyjamas everywhere.
It was “Pyjama Week” at Barkridges, and so far it had been little short of a disaster. No-one seemed to want to buy any, particularly in the style Paddington had chosen, and he had a nasty feeling that if something didn’t happen soon they would have an awful lot left on their hands.
(Adapted from: Michael Bond, 1992. Paddington Goes to the Sales.Carnival)
Today’s My Singing
Elvis の “There’s Always Me” という初期のバラードを歌ってみましたのでアップします。Lateral release で発音されている単語が2カ所(little と fiddle)あります。ただ、今回のようなスローなバラードでは、lateral release で発音しなくても大丈夫です。
When the evening shadows fall
And you’re wondering who to call
For a little company
There’s always me
If your great romance should end
And you’re lonesome for a friend
Darling you need never be
There’s always me
I don’t seem to mind somehow
Playing second fiddle now
Someday you’ll want me, dear
And when that day is here
Within my arms you’ll come to know
Other loves may come and go
But my love for you will be eternally
Look around and you will see
There’s always me
(*発音矯正を望まれる歌手・俳優、また、英語教師などの英語を使うお仕事をされている方は、ホームページをご覧の上メールにてお気軽にご相談ください。)
T-ACT英語発音矯正サービス
Email: s-tanaka@hatsuon-kyosei.com
HP: http://www.hatsuon-kyosei.com
いつもありがとうございます!
毎朝1時間、先生の2009年初回からのブログのレッスンを辿り、発音の練習をさせて頂いています。初めて4日間程度でも、ネイティブのアメリカの人たちに発音よくなっているね!と声をかけて頂きました。
これからも毎朝続けようと思います。更新楽しみにしています。
効果が現れてきたようで、なによりです!
朗報をありがとうございます。
発音は毎日のトレーニングが第一です。
ぜひ頑張って続けてください。
これからも頑張って更新していきます。
tlの発音にいきづまって、検索してるうちに先生のブログにたどりつきました。
今まで聞いたこともないくらい、キレイな発音と、わかりやすい丁寧な解説で
やっと、こうすればいいんだ、というところまで理解できました。
(手持ちの発音の本には、先生のような解説がのっていなかったんです。)
毎日のトレーニング、これが大事ですよね。地道に頑張ります。
たくさんのページがあるので少しづつ、勉強していこうと思います。
それにしても先生はすごく声が素敵ですね・・・!
家で歌を再生していたら、家族大絶賛(この声、誰!?と)でした!
私も先生が更新してくださるのを楽しみにしています。
お忙しいと思いますが、これからもどうぞよろしくお願い致します!
yokoさん
コメントをありがとうございました。
また、歌のお誉めまでいただき、恐縮です。気に入っていただけてなによりです!
Lateral release は音声学ではとても有名な項目なのですが、一般の方々に理解してもらえるような解説はなかなか見当たらないのが現状のようですね。
まして一般のネイティブスピーカーに説明を求めても、きちんとした説明を得るのは不可能に近いと言えるでしょう。
本当は、今回使用した解説図が動画にできればもっとよく理解してもらえたのではないかとも思うのですが・・・
これからも頑張って更新していきます。少しでもトレーニングのお役に立てれば幸いです。
側面開放の説明ありがとうございました。
今回はイラスト付きでわかりやすく、ようやくコツがつかめてきました!
何度もくりかえして練習してみます。
次回も楽しみにしています!
kotoeriさん
イラストがお役に立ってよかったです。
口内の舌の動きは言葉で説明してもなかなか理解してもらえないので、今回のような斜め下から見た角度のイラストを描いてみました。
(下顎を省略しているのでちょっと非現実的ですが・・・汗)