アップテンポの歌(音の脱落と単語間のつなぎ)

20th/07/2009

アップテンポの曲で発音のトレーニングをすることは、スローな曲を歌うときの余裕にもつながります。

今回は音の脱落(elision)と単語と単語のつなぎの練習です。
またまた Elvis Presley の歌で、アップテンポの歌の練習に絶好の曲、”Bossa Nova Baby” でやってみましょう。

I said, ‘Take it easy, baby
I worked all day and my feet feel just like lead
You got my shirt tails
Flyin’ all over the place
And the sweat poppin’ out of my head’
She said, ‘Hey, Bossa nova, baby
Keep on workin’ child
This ain’t no time to quit’
She said, ‘Go, Bossa nova, baby
Keep on dancin’
I’m about to have myself a fit’
Bossa nova, Bossa nova

まず、take it easy を徐々に速く発音していきましょう。it の /t/ は、次の easy の /i:/ とリンクしながら有性音化させていきましょう。
/teɪk ɪt i:zi/ → /teɪkɪti:zi/ ↓

take_it_easy.mp3

2行目の just like のところは、just の /t/ を脱落させて like の /l/ につなぎます。
/dʒəst laɪk/ → /dʒəs laɪk/ ↓

just_like.mp3

flying all over the place も単語間のつなぎの練習には絶好の箇所です。flying のように -ing で終わる部分は、本来は /ŋ/ で発音するのが一般的ですが、General American や歌のときには /n/ で発音することが非常に多いんです(flyin’ と書かれている場合は、その発音を表そうとしています)。over の -er の部分は決して長く伸ばさぬよう注意しましょう。
flying all over → flyin’ all over → flyn’ all over the place ↓

flying_all_over.mp3

さて、最も難しいのが keep on dancin’ I’m about to have myself a fit の部分かもしれません。
dancin’ I’m about は /dænsɪnaɪməbaʊt/ とつなげます。↓

dancin_im_about.mp3

次に to have myself の部分は、to を /tu:/ と発音せずに /tə/ と発音します。weak form の一例です。have myself /hæv maself/ の /v/ は次の myself の /m/ と同化し、my- /maɪ/ は単純母音化します(→ [hæmmaself])。これらをふまえて発音していきます。 ↓

have_myself.mp3

この部分全体を発音してみます。↓

dancin_im_about_have_myself.mp3

今回の曲はとても challenging です!
これを歌ってみると、こんな感じでになります。↓

bosa_nova_baby.mp3

いかがでしょうか?
ところで1行目の lead は、ここでは「鉛」という単語で、発音は /led/ です。お間違いないように。

この曲の完全版はこちらです

では、Good luck!

(*発音矯正を望まれる歌手・俳優の方は、メールでご相談ください。
s-tanaka@hatsuon-kyosei.com)
T-ACT英語発音矯正サービス

5 Responses to “アップテンポの歌(音の脱落と単語間のつなぎ)”

  1. 迷えるこぶた より:

    Tanaka先生

    先日、『ヤング@ハート』いうドキュメンタリータッチの映画を観ました。
    この映画、ご存知ですか?

    平均年齢80歳のアメリカのコーラス隊が、ライブに向けて練習をしていく様子を主に収録した映画なのですが、このコーラス隊のユニークなところは、彼らが”ロック”コーラス隊だというところです。

    ジミヘンの“PURPLE HAZE”や、プリンスの”NOTHING COMPARES 2 U” などを歌っちゃいます!

    曲によっては、初めて原曲を聴かされたときに、耳を塞ぐなどして、あからさまな嫌悪感を示すお年寄りもいるのですが、練習を繰り返すうちに少しづつ曲を自分たちのものにしていきます。

    中でもアラン・トゥ-サンの“YES WE CAN CAN”という曲は、can が71回(!!)も出てくる曲でみなさんとーっても苦労されていました!

    nativeであれば簡単に歌えるというものではないんですねー。

    ま、確かに、考えてみれば、日本語の曲を上手に歌うのも難しいですものね。

  2. admin より:

    『ヤング@ハート』は残念ながらまだ観ていないんです。
    英語の点からも音楽的にも面白そうな映画ですね。ぜひ観たいと思います。
    ありがとうございます!

    ところで、もちろん native だって言いづらいフレーズはたくさんあります。
    英語の tongue twister の数の多さをみてもわかりますよね。たとえば:

    Peter Piper picked a peck of pickled peppers.
    Did Peter Piper pick a peck of pickled peppers?
    If Peter Piper picked a peck of pickled peppers,
    where’s the peck of pickled peppers Peter Piper picked?

    これはすごく有名な tongue twister です。どの言語の話者でも、同じ音の繰り返しや、似通った音の繰り返しはとても発音しづらいんです。
    その点から考えると、今回のテーマで選んだ “Bosa Nova Baby” という曲は tongue twister ではないので、native speaker にとっては特に難しいものではないですよね。

    tongue twister がたくさん紹介されているサイトを見てみると楽しいです。たとえば http://www.geocities.com/Athens/8136/tonguetwisters.html だどはいかがでしょう?

    S Tanaka

  3. 迷えるこぶた より:

    Tanaka先生

    ご返答ありがとうございました。
    tongue twister のサイト、ご紹介ありがとうございます。うわー、たくさんあるんですね。
    tongue twister という表現、楽しくなりますね。

    日本語の早口言葉、生麦・生米・生卵も紹介されていますね。
    言った後に、ついついWow!と付け加えたくなってしまう世代ですが^^、
    ドリフターズのあの曲、言葉が持つリズムで楽しく遊んでいる曲でしたよね。

    学生時代 にスペルを覚えた時の名残りで、tongueと書くときは、
    頭の中では、「とんぐえ」とつぶやいて(?)いるのですが、
    tongue という単語は、綴りと発音がかけはなれた単語ですねー。
    他に同じような単語はなかったかなー、と考え、ようやく思いついたのは vogue です。

    最新のブログエントリーは、tongue twister ですね!
    実際の音声を、しかも、GBとGAの発音の両方で聞くことができるんですね。Super!

  4. [...] アップテンポの歌をマスターするときのポイントについては以前にも書きましたが(こちら)、歌詞が口から自然に流れ出てくるようになるまで何度も繰り返し練習する必要があります [...]

  5. irockounc より:

    I love hatsuon-kyosei.com! Here I always find a lot of helpful information for myself. Thanks for your work!
    Best regards

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