ビートルズ(The Beatles)の歌が初めてアメリカで流れたとき、多くのアメリカ人は「なんだこりゃ?」という決して好意的でない反応を示したようです。
ビートルズはメンバー全員がイングランド北部の港町リバプール(Liverpool)の出身ですが、イングランド北部の中でもこの地域の訛は一種独特で、他の北部にはない特徴がいくつかあります。リバプール訛の具体的な特徴については別の機会にとり上げるとして、今回はビートルズ独特の声質(voice quality)に焦点をあてようと思います。
リバプールの人たちは独特の声質で話すことでも知られており、ビートルズのメンバーの声もまさにその典型的な例といえます。この独特な声質は velarization (軟口蓋化)と呼ばれる舌の状態から生まれます。Velarization とは、下の図のように、舌の奥(後舌面)が軟口蓋(velum)に向かって少し持ち上がっている状態を意味します:
英語では、地域によってパターンは異なりますが、/l/ を発音するときに velarization を起こすときがあります(これについては次回とり上げます)。リバプールの人たちは発話中つねに舌がこの状態(velarization)になっている点で特徴的なのです。
では、いくつか短いセンテンスを、私の通常の声質、つぎにリバプール独特の velarization を加えた声質の2通りで発音してみますので、違いを確認してみてください:
● Hello, everyone.
● We never stop singing.
● Give it back to me, will you?
● You have to do something about it.
明らかに声質が違うのを理解してもらえたかと思います。ビートルズのなかでも、ジョン・レノンとジョージ・ハリスンは特に velarization が声質に反映しているようです。
Today’s my singing
とうことで、リバプールの声質にこだわりながら、今回はビートルズのナンバーを歌って録音してみました。曲はジョージ・ハリスンの有名な “While My Guitar Gently Weeps” です。注意しなければならないのは過度の velarization を避けること、つまり、後舌面をあまり持ち上げ過ぎないことです。ビートルスの歌をビートルズのように歌いたい方はぜひ練習してみてください。↓
I look at you all see the love there that’s sleeping
While my guitar gently weeps
I look at the floor and I see it needs sweeping
Still my guitar gently weeps
I don’t know why nobody told you how to unfold your love
I don’t know how someone controlled you
They bought and sold you.
I look at the world and I notice it’s turning
While my guitar gently weeps
With every mistake we must surely be learning
Still my guitar gently weeps
I don’t know how you were diverted
You were perverted too
I don’t know how you were inverted
No one alerted you.
I look at you all see the love there that’s sleeping
While my guitar gently weeps
Look at you all . . .
Still my guitar gently weeps.
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Besides a number of phonological characteristics of the accent of Liverpool, what is technically called “velarization” is an interesting feature known to be present throughout Liverpool speech. Velarization, which means the raising of the back of the tongue towards the velum, gives the accent of Liverpool a distinctive voice quality. The members of the Beatles, all Liverpudlians, are also well-known to have this voice quality.
The song I’ve sung and uploaded here is “While My Guitar Gently Weeps”. This is my first attempt to imitate George Harrison’s voice quality!
(*発音矯正を望まれる歌手・俳優、また、英語を使うお仕事をされている方は、ホームページをご覧の上メールにてお気軽にご相談ください。)
T-ACT英語発音矯正サービス
Email: s-tanaka@hatsuon-kyosei.com
HP: http://www.hatsuon-kyosei.com
とても興味深いです!!
ビートルスのコピーバンドでボーカルやってます。ビートルズの発音についてぜひもっと書いてください!!
ビートルズマニアさん、
リバプールの発音はとても特徴的ですね。後日さらに詳しく紹介する予定でいますので、その時は参考になさってください。
僕もビートルスのコピーバンドでポールマッカトニー役をやっています。ポールの発音は他の3人とはどうも違うように聞こえます。なぜか日本人にわかりやすい発音に聞こえるんですが、勘違いでしょうか?ビートルズの発音の続きを熱望しております。ぜひとも続編をお願いいたします。m(._.)m
それと、Elvisの歌を聞かせて頂きましてそっくりですね!!
ブログの発音も完全にネイティヴの方の英語に聞こえまして、プロフィールを拝見しまして日本人の方だと知って本当にビックリしました。素晴らしいい歌と発音でとっても憧れます。
ところでノンネイティブの方ですよね?英語ノンネイティブの日本人は成人になってからのネイティヴ発音は無理っていう意見が多いですが訓練次第でネイティヴのように発音できるようになるんでしょうか?
これからも他では得られない素晴らしい内容のブログをお願いいたします。
ベイビーさん
とても encouraging なコメントをありがとうございます!
私は non-native です。子供の頃から「ものまね」が好きで、英語の発音も同じようにやってきました。成人した日本人がネイティヴのような発音を習得できるか、というのは本当によく受ける質問です。これは日本人に限らず、正直のところとても難しいのが現実です。ただし、本人の絶え間ない努力によってかなり native に近づくことは可能です。私は発音矯正でそのお手伝いをさせていただいてます。いつかブログでもこの問題を取りあげようと思っています。
ビートルズの発音の続編は近日中にアップする予定です。ポールの発音が他の3人より聞き取りやすいか否か、という点につきましては何とも言えませんが、ポール役でお歌いになる際に役立つ情報はお伝えできるのではないかと思っています。
これからも頑張って更新していきます!
早速のご返事コメントを頂きまして本当にありがとございます。
「成人した日本人がネイティヴのような発音を習得できるか」という話題につきまして、自分で色々思ったことや疑問点などをこちらのコメント欄に書きこんでもよろしいんでしょうか?
けっこう長文になりご迷惑になるかもしれませんので、メールでご連絡やご質問させていただくことはお許しいただけますか?
実は結構悩んでるんです。ネイティヴレベルの白人さんのハーフの方に指摘されたんですが、カタカナ発音にはなってないけど全く不自然な発音だと云うことなんです。
いろいろ頑張ってるんですが、自分では修正の方向性すら分からない状態なんです。m(>o<)m
よろしくお願いいたします。m(._.)m
ベイビーさん
いつでもコメント大歓迎です!
また、もしご意見等が長くなる場合にはいつでもメールをお送りください。
Shigeさん、ありがとうございます。なるべくコメント欄で書ける内容はこちらを利用させてもらいます。m(._.)m
全く不自然な発音と指摘される前には関東の方の発音セミナーと関西の方の発音セミナーに参加しましてそこまで酷い指摘はされなかったので自分では何とかなるかなっと思ってたんですが、甘かったですm(>o<)m
どちらの方も「英語喉」という本を主体に指導されておられる方でとっても発音も上手かったし、かなりの英語力とご経験をお持ちの方でブログでも活躍されておられました。
でも、白人の体を持ったハーフの方からするとやっぱり僕の発音にかなり違和感が感じられるそうなんです。この差が僕ら日本人には分からないところかと思うんですが、とにかく挨拶の Hi の発音からしておかしいと指摘されました。 Hi ですよ!エ~どこが?ってかんじでした初めは。
自分で色々調べた結果やっぱり二重母音の発音が少しおかしかったんです。修正したんですが、それでもハーフの方には違和感がまだ残ってるようでした。
Go の発音もダメでした。これも二重母音の発音に勘違いがあり一応修正しましたし、D音もこちらのブログ記事で間違いがわかり修正していますが、違和感はまだ残ってるようでした。
たぶん両方のセミナー時でもおかしなところはあったんだと思うんですが、とりあえず両方は分かっておられたんでしょうが時間の関係でそこまでの指摘はなかったです。
まだ自分が気づかない何かがおかしいんだと思います。自分では修正がなかなか出来ない状況です。(それでも映画の英語が聞こえるようには以前よりなっているんですが。)
やっぱりBeatlesの歌ですし発音に違和感が残るようでしたらネイティヴの方は聞きづらいでしょうし何とか改善できるよう頑張っているところです。目標はネイティヴの方に認められる歌をうたうことです。
以前、Beatlesの曲をセッション形式で楽しむライブハウスの企画デーで、ジョン役の人がちょっとヘタでネイティヴの方に勝手にマイクを乗っとられて惨めな思いをしているのを目撃してからちょっと意識が変わったんですね。
勝手にマイクを乗っとられた曲はTwist&shoutですが、なんじゃそのしょぼいshoutっはって感じの方にですよ!(発音以外はその人に負けてないって自分では思っています。それと僕が乗っ取られたんではくれぐれもないです。僕はポール役ですし)
その時の目撃は、この状況は許されない行為だと怨念に近いショックがありました。何時か絶対おまえらに負けへん歌をうったてやると云う気持ちと、ヘタだとそれも当然と云う気持ちが今は半々ですが。
そこで、今まで自分で調べたことや、気づいたこと、セミナーに参加して勉強したことをまとめて、カタカナ英語からちょっと進歩した状態からネイティヴ発音に近づく為の何かを探っていきたいと思っています。
続きはまた後日ですがこんなの続けて良いですか?
よろしくお願いいたします。m(._.)m
セッション形式のライブで Beatles の歌を乗っ取られた云々については、発音が原因なのかは私にはなんとも意見しかねますが、
ただ、Beatles のナンバーは誰もが歌いたがるものですので、セッション形式の informal なライブでは有りがちな事なのかもしれません。
(もちろん最悪の違反行為であることは言うまでもありませんが・・・)
Beatles や Elvis などは、ただのパフォーマーの域を超えた象徴的存在になっているので、彼らのナンバーをライブでやるのは本当に難しいと思います。
ベイビーさんのご苦労をお察しします。